『ヘルプ 心がつなぐストーリー』、久しぶりにいい映画を見ました。
アメリカで公民権運動が盛んになってきた頃のミシシッピー州のジャクソンという町を舞台にした映画です。
ヘルプというのは、白人家庭で家政婦として働く黒人の女性たちのことです。原作は、1960年代に黒人の家政婦たちの差別と偏見の経験、自由への叫びまた白人家庭との温かい交わりを彼女たちからの聞き取りによって白人女性が綴ったものです。
ストーリーを語ることは映画と小説にお任せしますが、わたしなりに心に残ったシーンをいくつか紹介します。
黒人の家政婦のエイビリーンは、白人ジャーナリストのスキーターから「ヘルプ」としての経験を話してくれるように依頼を受けますが、白人からの差別、まなざしを恐れて頑なに拒みます。しかし、彼女に語る決断をさせたのが、日曜日の牧師の説教の言葉でした。「同胞のために立ち上がる者こそ勝者」「それを神が望んでおられる」「恐れずに勇気を出しましょう」.この言葉に押し出されて、エイビリーンは語り始めます。そして、その行動が多くの黒人家政婦たちの勇気を引き出していき、この証言集が出来上がるのです。
エイビリーンが勤める白人家庭の小さな娘は母親にかまってもらえません。その娘に対して、彼女は「あなたは美しい、あなたは賢い、あなたは大切」ということをいつも教え、抱きしめてあげます。それはまるでそんな言葉なんてかけられることのない自分自身に語っているようであり、この単純な言葉がどれだけ大きな力を持っているのだろうかと考えさせられました。
最後のシーンでは、エイビリーンは雇われていた家族から解雇され、「行かないで」と泣き叫ぶその家の娘と別れて、一人道を歩いて行きます。そこで彼女は自分が「書く」という力があることを確信し、その可能性へと歩んでいきます。誰かを助ける(ヘルプ)ことではなく、自分の力で歩んでいこうとするしっかりとした足取りが印象的でした。
ぜひ、映画を見てください。黒人女性の解放が、白人女性でも差別されている人に力と希望を与えているストーリーでもあります。