2011年5月7日土曜日

つながること、理解すること  小川洋子・岡ノ谷一夫『言葉の誕生を科学する』を読んで

小説家の小川洋子さん(『博士の愛した数式』など)と神経生態学者の岡ノ谷一夫さんの対談を本にした『言葉の誕生を科学する』(河出ブックス)を読んで色々と考えさせられることがありました。

岡ノ谷さんは、「人間の言葉の起源は歌にある』という理論を掲げています。言葉の進化ではなく、言葉がなかったところから言葉が生まれてくる「起源」の探求です。そこで言葉を持たない小鳥のさえずり(歌)を研究することを通して、言葉の起源を探ろうとされています。

言葉の起源を生態学的に研究する科学者と、言葉を生業としている小説家の対談はなかなか興味深いものでした。ここではそのすべてを紹介することはできませんが、小川さんがおっしゃった次の言葉が非常に印象に残っています。

「他者とのつながりを強化する方向に注がれるエネルギーと、自己を探求するエネルギー、このバランスが崩れているのかもしれません。たぶん、本が読まれなくなったというのもそこにつながっていくんでしょうね。自己について深く思索する必要を感じないなら、本を読まなくてもいっこうに構わない。自己と対話する機会がなくても、いくらでも他人と対話することで紛らわすことができる」(77頁)。

この言葉を読んでいて思ったことは、メールやインターネット上のソーシャルコミュニケーション(Facebookなど)がはやって、「つながる」「つながっている」ということがとても大切なこととして語られ、また簡単に実現できるけれど、「つながっている」ことと「わかりあえている」ということとは別なことではないのだろうかということです。現代は「つながっているけれど、わかり合えていない」ということが多いのではないかとおもいます。そして、わかり合うためには、わかり合えていないという苦しみを越えなければならないし、そのためには自分ともっと深く対話しなければならないのではないでしょうか。

そんなことを考えて、今日、映画『阪急電車』を見ると、その中にこのテーマが描かれていることに気がつきました。多くの人がつながっている(仲間になっている)けれど、本当に理解し合えていないことに悩んでいます。そんな人たちが、阪急電車の宝塚線で出会うことで、自分自身の心の声と対話することができるようになり、一人一人がエンパワーされていくのです。なかなか良い映画でした。関学が何回も出てきます。わたしたちも夫婦で映画に行くと2000円で見られるようになりました。嬉しいような、悲しいような。

2011年5月5日木曜日

イースターの飾り

タームリーな写真というわけではありませんが、今我が家に飾られているイースターの飾りを紹介します。


イースターは、クリスマスと違って移動祝祭日であるので、毎年同じ日に祝われるのではなく、「春分の次の満月後の最初の日曜日」と決められています。それで、今年は4月24日と、比較的遅いイースターでありました。

日本ではクリスマスの飾りは普及していますが、イースターの飾りというのはピンとこないのではないでしょうか。以前京都のデパートのクリスマスグッズ特設会場で大きなクリスマスツリー全体にこのイースターエッグが飾られているのを見て、唖然となりました。


イースターというと卵。死をイメージする石のような形からいのちが生まれる卵は死からの復活のシンボルとして用いられます。ドイツでは、長くて寒い冬を越えて春の到来を待ちわびる人々の思いを先取りするように、2月頃から既にイースターの飾りが売り始められます。昨年のイースターは4月4日でしたので、わたしたちがドイツで生活し始めた頃には、イースター・グッズは既にセール期間に入っており、30%オフぐらいでこんなきれいな飾りの卵を買ってきました。


小さな人形は、特にイースターとは関係ありませんが、春色の雰囲気が春の到来の喜びを表しています。シュタイナー教育の考えで作られた人形たちです。


陶器の飾りは、ドイツの友人からプレゼントでいただいたものです。玄関に飾ってあるので、毎日目にしては、ドイツでの生活を懐かしく思い出しています。テントウムシはドイツでは典型的な春のシンボル、「5月虫」という名前です。

森の木琴

たまたま見ていたテレビ番組で紹介されていたドコモの携帯電話のCMに驚き、また感激したので紹介します。



ここで流れている曲はバッハ・カンタータ147番"Herz und Mund und Tat und Leben"の第1部と第2部の最後に歌われるコラールです。バッハが、マルティン・ヤーン作詞の"Jesu, meiner Sellen Wonne"(イエスよ、わたしの魂の喜びよ)から選び出した2節に曲を付けたものです(日本では「主よ、人の望みの喜びよ」で知られた曲)。バッハも日本の携帯電話会社が、こんな形で演奏するなんて思いもしなかったでしょうね。

2011年5月4日水曜日

卒業から・・・

今年の2月、まだハイデルベルクにいる頃、小樽に住んでいる一人の元学生がゴールデンウィークに関西に来るので、一緒に食事でもしたいという連絡が、彼女の友人で同級生の106さんからあり、2ヶ月前からこの日を楽しみにしていました。この二人はこのブログをよく読んでくれて、札幌と姫路からのアクセス数を全世界5位と7位に押し上げた方々です。

さて当日になるとこの二人にさらに彼女たちの同級生と106さんのお連れ合いも加わり総勢9名の人たちがわたしたちの家を訪問してくれました。久しぶりに会う人もあり、とても楽しい、また懐かしい再会の時となりました。


料理は持ち寄ってくれたので、食べきれないほど集まりました。夜の11時半までワイワイガヤガヤ、話題と笑いも持ち寄ってくれたので、本当に楽しい時を過ごすことができました。卒業してからまだ5-6年しか経っていないけど、それぞれに人生の大きな経験をして、今日のこの日に集まることができことがとても感慨深かったです。『卒業から・・・』なんて題して、オムニバス形式で彼女たちや彼らの歩みを綴れば、とても良い小説になりそうな感じです。


わたしたちにとってもサプライズを用意してくれ、わたしの留学の成果を祝って、モンブランの凄い良い筆記具をプレゼントしてくれました。「先生、重要な書類にこれでばんばん署名をしてください」と言われましたが、はたして何が重要な書類になるのやらと考えました。みなさんに出す年賀状やグリーティングカードがその「重要な書類」かなと思ったりしています。息子の誕生日ケーキもありがとうございました。


マンションの1階の玄関で「またね〜」と笑顔で別れ、家に帰ってみると忘れ物が部屋のあちこちから次々と出てきて、慌てて持っていきました。部屋の中には、まだみなさんの声や笑い顔が残っているみたいです。大事に取ってありますので、またいつかそれを取りに来て下さい。

2011年5月2日月曜日

お祝いの宝石箱

今日は、息子の20歳の誕生日。この記念日をきっかけに、両親の喜寿のお祝い、娘の卒業・就職祝い、わたし自身のドイツでの成果のお祝いを一緒にして、芦屋の住宅街の中にあるフランス料理店で食事をしてきました。


小さな駅(阪神打出駅)からこんな所にレストランなんてあるんだろうかと思う住宅街を少し歩いて行くと、オシャレなたたずまいのレストラン「シェ・モリ」があります。外見はちょっと電飾が多くないかなあという印象ですが、店内は少し照明を落とした落ち着いた雰囲気です。あまり広くありませんが、でもゆったりと座れる贅沢な空間です。


 4段重ねのお祝いなので、コース料理をいただきましたが、出てくるもの一つ一つが手の込んだもので、驚きの連続でした。でも、去年パリでフランス料理を食べたけれどこんな繊細な味できれいな盛りつけのものは出てこなかったなあ、フランスでも食べられないフランス料理を日本の住宅街で食べていると思うとなんだかおかしくもあり、また日本人の突き詰めていく性格に敬服もいたしました。

にんじんのムースとウニ
前菜:燻製のサーモンと穴子を中心に数種類の海の幸と野菜
鱸と行者ニンニクの茎
仔羊のなんちゃら?
息子には特別の飴細工付デザート
一つ一つの料理の名前は忘れたけれど、思い出に残るディナーでした。

2011年5月1日日曜日

小麦粉三昧

週末の夕食には、自分で手作りパスタを作ったり、パンを作ったりして食べるのが好きです。

手作りパスタは4年ほど前にパスタマシンを買ってから作り始めました。最初は台所中粉まみれで大騒ぎをしていましたが、今ではだいぶんストレスなく作れるようになりました。このパスタマシンは、なかなかの優れものです。これでイタリアのパスタだけではなく、うどんも作れます。

パスタの材料は、薄力粉200g、強力粉200g、卵4個、オリーブオイル、塩だけです。これをパン焼き器にセットして1時間ほどこねてもらい、その後生地を休ませ、パスタマシンでくるくる伸ばして、そしてくるくる裁断するとあっという間にできあがり。ゆで時間も2-3分で済み、歯ごたえ、味もばっちりです。今日は息子がカルボナーラソースを作ってくれました。



それと並行してパン作り。今回はドイツ語でHefezopf(ヘーフェ・ツォッフ)というパンです。Hefeは酵母、イースト菌のことで、Zopfは三つ編みの意味です。強力粉400g、砂糖60g、バター60g、牛乳200cc、イースト菌8gを混ぜて、発酵させ、三つ編みに整形してできあがり。こんなパン(約30センチ)が二つできあがりました。1つはプレーン、もう一つにはプルーンを入れてみました。なかなかの美味、美味。