2010年5月14日金曜日

イエス様は薬剤師

今日、5月13日(木)は、イースターから40日目、キリストの昇天日(Himmelfahrt)です。ドイツでは祝祭日で、教会では昇天日礼拝が守られています。第2の受難日とも言われていて、せっかく復活したイエスが、また弟子たちのもとを離れていきます。そしてペンテコステまでの何か空白のような10日間を過ごすわけです。
ある笑い話ですが、教会の各祝祭日のときには、「祝福されたクリスマスを」とか「祝福に満ちたイースターを」という挨拶を交わします。ある少年が、昇天日礼拝のあとで、隣に座っていた老婦人に別れ際に、「祝福されたご昇天を」と言ったということです。

前回も書きましたが、とにかく寒い日が続いていて、電話をかけてきたドイツ人に、5月なのにどうしてこんなに寒いのだ、季候がおかしいんじゃないかと聞くと、5月の中頃をアイス・ハイリゲン(氷の聖人)というのだと教えてくれました。これは農家などの民間伝承で、5月11日から15日頃は霜が降りるほど寒い日が続くので、農作業や庭仕事に注意しなければならないそうです。この時期にバルコニーのプランターに花を植えると、霜が降りてダメになってしまうので、気をつけなければなりません。そして、5月11日から15日のそれぞれの日に覚えられる聖人が決まっており、これらの聖人のことをアイス・ハイリゲン(氷の聖人) と呼び、特に天候に気をつけているようです。あまり聖人伝説には科学的な根拠はありませんが、経験知というものだと思います。でも、寒い。

今日の午後、久しぶりにハイデルベルク城の中にある薬事博物館を見学してきました。ドイツの薬剤、薬局の歴史が分かるとても興味深い博物館です。

その中で「薬剤師としてのイエス」というモティーフを見つけました。

それは18世紀頃に広まったイエス理解、また癒し理解です。まだ病気と宗教、信仰というものが密接に結びついていた時代のことです。確かに薬剤師は病気を癒してくれるけれども、本当の癒しをもたらせてくれるのはイエスだけだという信仰から、イエスを「天国薬局」の薬剤師として描くことが広まったそうです。

イエスが持っている魂をはかる天秤は最後の審判(ヨハネ黙示録6:5)を象徴しています。

また、信仰と愛と希望(1コリント13:13)が、パンと杯(聖餐)、心臓、錨(こころの支え)によって象徴的に描かれています。その下の文章はマタイ11:28ー29の「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。やすませてあげよう。・・・・・」という聖句が書かれています。イエスの向かって左側の棚には、魂のための薬が並べられています(ちょっとはっきり字が読み取れません)。

右側の奥には、イエスが目が見えない人を癒している物語が描かれています。

2010年5月12日水曜日

寒い中での熱い一時

とにかく、最近のドイツは寒い。数週間前は、一時は20度を超す陽気で半袖シャツを入れた荷物の到着が待ち遠しかったのですが、「キタ−!春ー!」というブログを書いたのもつかの間、毎日雨と曇りばかりの寒い日々が続いています。昼間でも10度から15度ぐらいです。半袖のシャツも寒々しく見え、タンスの奥にしまってしまいました。

昨日は寒さに加えて、夕方出かけようとすると、一天にわかにかき曇り、雷が鳴り、雨が降り始めました。

実は、昨日は外国人留学生や研究者を招いてのコンサートがありました。チャリティーコンサートで入場料はなく、一般にも開かれています。自由に募金し、それを社会福祉事業に寄附するということです。

案内には、Noe Inuiという演奏者(ヴァイオリニスト)の名前が書かれていました。Inui(いぬい)という日本語の響きの名前と、Noeというちょっと聞き慣れない名前の組み合わせを不思議に思いながらも、コンサート会場に向かいました。

コンサート会場は大学のAula(講堂)です。このAulaはハイデルベルクの中でも特に気に入っている場所です。19世紀の終わりに改装されたもので、まるで宮殿の1室かと思わせるような装飾がなされ、非常に荘厳さとアカデミズムを感じさせるところです。天井には各学部を表現した絵が描かれています。


Noe Inui氏ですが、ブリュッセルで日本人の父親とギリシャ人の母親の間に生まれ、12歳でブリュッセル王立音楽院に特別入学、14歳でソルフェージュ科とヴァイオリン科を首席卒業。同年、ベルギーのワロニア王立管弦楽団と共演しソリストデビュー。その後パリ国立音楽院を経てパリ国立高等音楽院で在学中、交換留学生としてカールスルーエ国立音楽大学大学院で学び。19歳でパリ国立高等音楽院を主席で卒業。世界的に演奏活動をしてい方です。こんなすばらしい方の演奏を、Aulaで聴けるなんて至福の時です。

演奏曲は、バッハ、ウジェール・イザイ、エルンストーロタール・フォン・クノル、ニコロ・パガニーニの4曲ですが、彼の熱演に聞き惚れた一時でした。顔の角度によっては、日本人に見えたり、ギリシャ人に見えたりするInui氏が、汗だくになって弾いてくれたバイオリン(ストラディヴァリウス)演奏は、本当に「熱い一時」でした。

コンサートのあと、冷たい雨の降る中、ハイデルベルクで一番頑固者の店長がやっている,ハイデルベルクで一番おいしくてお手頃な値段(600円ぐらい)のピザ屋で、ドイツ人の学生と「熱いピザ」を食べながら「熱い会話」を交わしました。

でも、Inui氏は何カ国語を話せるんだろう?

2010年5月11日火曜日

バッハ・カンタータ・ゼミ BWV49と95

今朝、ようやくちょうど2ヶ月前に日本から送った荷物が届きました。念願の炊飯器がついたのですが、この1ヶ月ほどで鍋でご飯を炊く術を覚え、またそれが思いのほか簡単で、しかもおいしいので、あまり感動もなく、受け取りました。醤油にみりん、乾麺、ラーメン、海苔に乾燥ゴボウなど一挙に台所の棚が一杯になりました。でも、本当は手に持ってこようと思っていた味噌を忘れたので、当分味噌汁はお預けです。まあ、先日ご紹介した「タイガー・ドラゴン」に行けば買えるのですが。

荷物の片付けも1時間ほどで終わり、今日のバッハゼミのための予習をしていました。妻が、今日はBWV95をやる予定だというので、インターネットからテキストを印刷して、準備していきました。

ところが、授業が始まると、メラー教授が「みなさん、今日はカンタータ49番です」というじゃないですか。一番前に座って、講義を受けているので、何事もないように用意した95番のプリントを、「何も間違ったことをしてませんよ〜」という顔をしながら、さりげなくファイルの中にしまいました。幸い、バッハ・カンタータ全曲集という本を持っていたので、助かりました。

これは、よくある間違いで、ドイツは20以上の数字を日本語とは違って、逆に言います。たとえば、95は「5と90」というわけです。これを早口でいわれる(ただ聞き取りが悪いだけですが)と、ふと勘違いして「9と50」みたいに聞き間違ってしまうことがあります。またわたしたちには40と50がよく似ているわけです。ちなみにわたしのノートには49と書いてありました(^_^)v。

もう15年ほど前になりますが、ドイツで働いていたときに、40人ぐらいの人と一緒にスイスにバス旅行に出かけました。チューリッヒという街に着いたときに、リーダーから「2時フュンフツェーンに集合です」といわれました。フュンフは5,ツェーンは10で、英語のフィフティーンと同じで15分を意味しています。こんな初歩的なことはわかりきったことなのですが、その時はなぜか、5と10だから50分だと思い込み、プログラムの紙にも2時50分と書いて、わたし一人で街をブラブラして、2時45分ぐらいにバスのところに帰ってきました。するとなんだかおかしな雰囲気、みんながわたしをの方をじろじろ見ているわけです。「お前、数字を聞き間違えただろう。みんな心配して待っていたんだよ」といわれて、自分の聞き間違えに気がつきました。小さいころから親に「あっ、しもた、ということをするな」とよく言われていたのですが、まさに「あっ、しもた」でした。


まあ、それとよく似たことが今日も起きたわけです。ところが、これから、続きがあります。

講義が終わって、来週講義を担当してくれる教授に、来週のカンタータは何番でしょうかと聞くと、「あなたはさっき95番のテキストを持っていたけれど、どうしてですか。」と聞かれました。「しまった、見られていたか・・・」と思い、事のてんまつを説明して、笑い話になりました。ところが、彼自身はわたしのプリントを見て、「実は、来週95番にしようか、それとも161番にしようかと迷っていたところ、あなたが95番のテキストを持っているのを見て、天の声を聞いたような気がしました」といわれたのです。

わたしたちの聞き間違えが天の声になるという不思議な経験でした。しかも、メラー教授からは、「この人は葬儀をテーマに論文を書いているから、次週は95番がいいんじゃないか」という後押しの声もあり、来週はBWV95「我がいのちなるキリストよ、死はわたしの得」になりました。
ちなみに、BWV49の主要なテーマは「声」でした。

これに気をよくして、帰りに前から気になっていた、自分のところでビール醸造をしているレストラン(レストランもしているビール醸造所??)で、ビールを買って帰りました(1本650円、瓶代を含む。1リットル瓶ですよ。でも普通は500mlが1本80円ぐらいですから、やっぱりちょっと高め。)。これまた瓶をここに返しに行くと、また瓶を交換して新鮮なビールを買えるわけです。

やっぱり、バッハのカンタータはおもしろいです。専門を変えようかと思うぐらいです。

刺激的な勉強のあとの新鮮なビール、カーッ、たまりませんなぁ。ドイツ語の失敗も吹き飛びます。

2010年5月9日日曜日

自転車・フローマルクト(ノミの市)

ドイツにはフロー(虫のノミ)マルクト(市)「ノミの市」というのが、土曜日などに各地で開かれます。日本でいうフリーマーケットみたいなものだと思ってくださって結構です。個人的に自宅の不必要なものを持ってきて、店を開いて、売るわけです。アンティークなものもあり、ひやかしで見ていくだけでも楽しい催しです。最近はプロの人も参入してきています。

ドイツ、特にハイデルベルクでは自転車は必需品です。特に車を持っていないわたしたちにとっては、買い物には欠かせない移動・運搬手段です。最近はプラスチック、ペットボトル容器も増えてきましたが、何しろ、あらゆるものが回収費込みの瓶入りで売っています(ヨーグルト、水、マヨネーズ、ビール等々)。ですから、買うのも返すのも結構な重さになります。それから、わたしの住まいから街の中心、また神学部まで約3.5キロほど離れているので、歩くと45分、バスで30分弱(片道300円弱)ほどかかります。それが自転車だと10-15分ぐらいですから、断然自転車の方がお得で、便利です。そして街の至る所に、自転車置き場がありますし、自転車については結構寛容です。ただし、自転車用の道がはっきりしていて、反対車線や歩道をふらふら自転車に乗っていると怒られます。

しかし、1年しか滞在せず、また日本に持って帰るのも容易ではないわたしたちにとっては、新品の自転車を買うのはどう見てももったいなさ過ぎます。日本でいうママチャリみたいなものを、7-8,000円で売っているということもなく、新車だと最低でもスーパーで22,000円ぐらいします。専門店だと70,000-10数万円します。これに、鍵、かご、こどもがいればこども用の座席を買わなければなりませんので、結構な出費です。

ですから、春になると各地で自転車のフローマルクトが開かれます。昨日ハイデルベルクでも自転車フローマルクトが開催されたので、妻の自転車を求めて、行ってきました。

10時からの開始で、10時30分頃行くともう人が一杯出入りしていて、すでに自転車を持って帰っています。特にこどもの成長にあわせて乗り換えるために、こども用の自転車が人気です。また学生やわたしたちのような外国人もたくさん買いに来ています。自転車の質はピンからキリまであります。40ユーロ(5000円ぐらい)から400ユーロ(50000円)ぐらいのものがあります。

売れても、次から次に新しく売りたい自転車を持ってくる人がいます。

ものを大切にするドイツでは、ほとんどが古いものですが、いわゆる安物の粗悪品はありません。ものがしっかりしていると、ドイツ人はあまり気にしません。

ドイツ人は背が高く、足が長いので、日本人にあう自転車を見つけるのが一苦労です。

ドイツの石畳の道に合うように、マウンテンバイクが主流です。



いいのを見つけても、迷っていると、さっと横から来て取られてしまいます。気に入ったら手を離していけません。



前ブレーキしかなく、ペダルを一瞬逆回転させると後ろブレーキがかかるという、わたしたちには何とも不慣れなブレーキシステムもあります。




ようやく、何とか使えそうな自転車を見つけました。18段ギアのマウンテンバイク型で130ユーロ(約16000円)でした。バス26往復分です。


決して安くはありませんが、これをまた1年後には、最高半値で買ってくれるということです。

はたして、1年後いくらで売れることやら。