2010年9月12日日曜日

ジーガー・ケーダー神父 6 ローゼンベルク教会祭壇画(5)

さて、ケーダー師の祭壇画の続きです。
祭壇画の左右の絵を折りたたむと、別の祭壇画が目の前に広がってきます。

ご覧の通り、イエスの受難物語が描かれています。ここでも、イエスの顔はむしろ隠され、イエスを取り巻く人々によって、イエスの十字架の意味が描かれています。

最初に、向かって左の絵です。


十字架上のイエスが描かれています。しかし、この絵の中で最も大きく描かれているのは、前面の縞模様の服(囚人服のような)を着た人間です。この人に有刺鉄線が絡まり、皮膚からは血が流れ、血を流すイエスの姿と重なっています。
この人はドイツの強制収容所に入れられたユダヤ人です。有刺鉄線は強制収容所の象徴でしょう。実はこの近くにも強制収容所はあり、そこら別のところに移されるときに「死の行進」がなされ、もう動けなくなってしまった人がこの地方の森で銃殺され、埋められたという悲惨な出来事があったそうです。この絵は実はその事実を思い出させるものです。そして、このうずくまっている人の上にはとげがある植物があり、そこに白いバラが一つ描かれています。「白バラ」です。「白バラ」は第2次世界大戦かにおけるドイツの非暴力主義の反ナチス運動を指します。日本でも『白バラの祈り』という映画が公開されたのを見られた方もあると思います。その白バラの散った花びらが、この人の血、そしてイエスの血のしたたりによって赤く染まっています。この白バラが、イエスの誕生の場面のクリストローズの白い花と重なっているようです。

イエスの向かって左にいるのはギリシャの哲学者プラトンです。彼はイエスよりも400年も前の人物ですが。義人が十字架にかけられて殺されると、彼の本に書いたことにより、イエスを証しする人として見られています。

イエスの向かって右にいる二人は、アダムとイブです。イエスに彼らの救いを見いだすように、十字架のイエスを見あげています。

先にも書きましたが、この絵には違う時代の人が描かれています。そこに、イエスの苦しみは一体どういう意味があるのかという、ケーダー師の十字架の解釈があります。その絵の前に立つ現代のわたしたちも、その内の一人だと言えます。

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