2010年6月14日月曜日

ステンドグラス in ハイデルベルク −3−

2回にわたってお伝えしたシュライター氏のステンドグラスの設置計画が、大学教会のペテロ教会で進んでいます。
現在、4箇所のステンドグラスが設置されていますが、あと大きな3つの窓、小さな2つの窓の作成が計画されています。

現在作成されているものの中の一つをご紹介します。まずは、このステンドグラスを見てください。

聖霊教会の作品とはまた違う趣を持っていますが、シュライター氏らしい特徴も見ることができます。

なんのことかさっぱり分からないとっしゃる方もおられると思います。

シュライター氏は、いわゆる誰もが慣れ親しんでいるキリスト教のイメージを用いず、独自の表象言語を用いてキリスト教信仰を表現していますので、ぱっと見て分かるというものではありません。しかしそれだけに、わたしたちに多くの解釈と深い黙想の可能性を与えてくれます。

自由に解釈してもいいのですが、いくらかの鍵があります。

まず、ステンドグラスは左から右へと見てください。

このステンドグラスで目を引くのが、右側に描かれたコの字(逆コの字)が向き合って並んでいるところではないでしょうか。その組み合わせの多くが、右が灰色、左が白になっています。すべてが全く同じかというと、それぞれ少しずつ違っていることがお分かりでしょうか。しっかりと向かい合っているものもあれば、うまくいっていないものもあります。その間に何かが生まれているものもあれば、全く結びついていないものもあります。

次に、色に注目してください。

白という色は、清らかさ、光、救い、喜びを表します。その対極にある灰色は非常に微妙で、アンビバレント(両義的)な色です。つまり、灰色は黒と白の混ざったものです。それで、みなさんはこの灰色を、白に死や恐怖を表す黒が入りこんできた色と見なすでしょうか。それとも、黒に復活や喜び、希望を表す白が入りこみ、黒を凌駕しようとしている色と見なすでしょうか。


このステンドグラスのテーマは「出会い」です。コの字は人間、その組み合わせは様々な出会いを表現しています。
いまみなさんが経験している出会い、もしくは人間関係はどの姿ですか?みなさんは白ですか、それとも灰色でしょうか。
しかし、何もこのステンドグラスは人間の一般的な出会いだけを表しているわけではありません。
左の上から下へと貫かれた力強い赤い線は「神の愛」を表現しています。そして、左の白い部分、つまり神の国から、真ん中に白い光が差し込んできています。それはキリストの復活の光です。その復活の光に繋がっているコの字(人)が、おそらく元は灰色であったコの字(相手)と出会い、そのコの字は白へと変わっています。そして、その二つを神の愛の色である赤い十字架が結びつけています。

ひょっとすると、左がキリストで、右がこれまでの人生における様々な場面でのわたし自身であるかもしれません。

唯一の正解というものはありません。みなさんなりに、それぞれに解釈してみてはいかがでしょうか。あらたな「出会い」を発見できるかもしれません。

ドイツの教会はお金があるから、こんなステンドグラスを作れるのだと簡単に考えないでください。ペテロ教会もお金がなく、新しいステンドグラスのために募金を募っています。

以前、いま設置されているステンドグラスの説明会が開かれた時、ある夫婦が「一体このステンドグラスはいくらするのですか」と聞いてきたそうです。わたしは知らないのですが、結構な額だそうですが、その額を担当の方が個人的に告げると「それをわたしたちに献げさせてください」と言ってこられたそうです。そういう夫婦がもう1組あったと聞いています。

こういう方がおられるから、すばらしいステンドグラスが生まれるのか、それともすばらしいステンドグラスがこういう方を生み出すのでしょうか。

1 件のコメント:

  1. ひさびさに寄せていただきました。
    いくつかの記事をまとめ読みさせていただき、ちょっとしたモヤモヤが晴れたような感じです。
    課題を与えられたのですが、しかしリフレッシュ・・・なんだろうこの感覚は。

    遠い場所からの、しかしリアルな問題提起に感謝です。

    シュライターさんのステンドグラス、是非また紹介してください。で、できれば解説掲載を数日遅らせてもらえたら、より嬉しいです。表象言語の違いにあえて触れてみたい、そんな気分です。

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